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東京地方裁判所 昭和53年(手ワ)196号 判決

原告 マルキ産業株式会社

右代表者代表取締役 海老原一夫

右訴訟代理人弁護士 梓澤和幸

被告 根岸順

主文

被告は原告に対し金一五三万円及びこれに対する昭和五二年二月二三日から完済まで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

事実

一  請求の趣旨

主文一、二項と同旨の判決並びに仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。

三  請求原因

1  原告は別紙手形目録記載の裏書の連続する約束手形一通を所持する。

2  被告は右手形を振出した。

3  右手形は満期に支払場所に呈示されたが、その支払を拒絶された。

4  よって、被告に対し手形金と満期の翌日から完済まで手形法所定年六分の割合による利息金の支払を求める。

四  請求原因に対する答弁

請求原因1項ないし3項は認める。4項は争う。

五  抗弁

1  本件手形の振出日は昭和五一年一二月一〇日であるところ、原告の裏書の日付は振出日以前の昭和五一年一一月一五日であり、振出日より以前に裏書譲渡されることはありえないから、本件手形は無効である。

2(一)  本件手形は訴外株式会社設計室ノアに見せ手形名下に詐取された。

(二)  原告は右事情及び被告を害することを知りながら、本件手形を取得した。

3  被告は原告に対し本件手形金の内金一〇万円を支払った。

六  抗弁に対する答弁

抗弁事実は全部否認する。

理由

請求原因1項ないし3項は当事者間に争いない。

被告は、本件手形上の原告の裏書の日付は振出日より以前であるから、本件手形無効である旨主張する。本件口頭弁論で原告の所持する本件手形によれば、本件手形の振出日は昭和五一年一二月一〇日で、原告の裏書の日付が昭和五一年一一月一五月であり、振出日より以前の日付が記載されていることが認められるが、例え右のような記載であっても、被告が主張するように本件手形自体が無効となるとは解されず、原告の裏書が無効で原告は本件手形上の権利を取得しないかどうかの問題であると解される。旧商法四五七条一項によれば裏書に日付を記載することが裏書の必要的記載事項となっていたので、手形の振出日以前の日を記載した裏書は不適式で無効であると解されていたが、現行手形法においては、裏書の日付は裏書の必要的記載事項ではないから、振出日よりも前の裏書の日付が記載されていても、裏書の事実があった以上は、その裏書が無効であるということはできない。前記のとおり、原告が裏書の連続する本件手形を所持することは当事者間に争いないので、原告は訴外株式会社第三企画から本件手形の裏書譲渡を受けたものと推認され、従って、原告の裏書は有効であり、本件手形金を請求する権利を有するといわざるを得ない。

被告のその余の抗弁はこれを認めるに足りる証拠がない。

よって、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容し、民事訴訟法八九条、一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山崎潮)

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